
イヤホンやスピーカーなどの商品説明によく記載されているものの1つとして「周波数・ヘルツ(Hz)」というものがあります。イヤホン選びの際、あまり重要な要素にはなりませんが、言葉の意味すら知らないともなれば足元をすくわれる事態にもなりかねません。
最近は過度な周波数をうまく宣伝に利用しているメーカーもありますので、いま一度「周波数とはなにか?」という部分に関して解説していきたいと思います。
周波数とは?
これは株式会社MSソリューションズが高音質イヤホンとして2016年3月にリリースした『極の音域 Hi-Res ALDEBARAN』という製品の仕様説明欄です。
赤線で囲ってある行には「再生周波数帯域:5Hz~70kHz」と記載されています(70kHz=70000Hzです)。この再生周波数帯域というものがいわゆる周波数であり、ヘルツ(Hz)という認識で問題ありません。
再生周波数帯域という概念をわかりやすく解説すると、左側の数字が低ければ低いほど、そして右側の数字が高ければ高いほど幅広い音を再現することができる、といった要素です。
5Hzとなればかなり低い音であり、70kHzともなればもう人間では認識することすらできないレベルの高い音です。それだけこのイヤホンは幅広い音を再現できるといった製品の仕様説明欄になっています。
上の画像も『極の音域 Hi-Res ALDEBARAN』という製品の宣伝画像で、要は「これだけ他のイヤホンよりも幅広い音がだせるんだよ!」といった紹介でこのイヤホンを売りにきているわけです。
これを見て「うわスゲーじゃん!これにしよ!」と思うのは自由ですが、この周波数・ヘルツ(Hz)という概念には大きな落とし穴があります。
それは「人間の認識できる周波数には限界がある」という部分です。
人間の認識できる周波数
上の画像は生物ごとに認識できる再生周波数帯域をグラフにした表です。生まれつきの体質や年齢による多少の個人差はありますが、平均的に人間の認識できる周波数の幅は20Hz~20kHzと決まっています。
つまりはどんなに高性能なイヤホンで50kHz出せようが70kHz出せようが、人間には20kHz以上の音は聞こえないので意味がないのです。
というか70kHzもの高音が出るような音楽は作られませんし作れません。まぁそりゃそうです、人が聞けないような音楽を作る人はいませんし、意味がないですからね。
ここで先ほどの画像に戻ります。この画像に記載されている一般品イヤホンの再生周波数帯域は20Hz~20kHzとなっています。
ここまでくればその理由がわかってくるかと思います。そう、イヤホンの出せる周波数は本来20Hz~20kHzで十分なのです。個人差を含めても30kHzくらいまでで十分だと思います。なぜならそれより上を攻めても、人には聞こえないから。
普通のイヤホンメーカーがどこも似たような周波数で20Hz~20kHzなのは、技術的な限界がそこなのではなく、それ以上再生周波数帯域を広げる必要がないからです。
再生周波数帯域はあてにならない
この「再生周波数帯域」の広さを謳ったイヤホンの宣伝や広告はわりと多くのところで見うけられます。
ここで周波数への理解が乏しい方は「70kHzスゲー!」と何となく高性能に感じて手を出してしまうわけです。確かに高性能なのは理解できますが、その性能は人間にとって、ほぼ宝の持ち腐れとなってしまいます。
付け加えていうと、再生周波数帯域はイヤホンやヘッドホンなどのハード選びに全く参考になりません。100均のイヤホンでも20Hz~20kHzはざらにあります。しかし同じ周波数でも100均のイヤホンと3万円のイヤホン、音の違いは雲泥の差です。
正直なところ周波数はあまりあてにできず、記載されている周波数は問題なくても音が陳腐だったり低音が全然出ていなかったりというのが実態です。あまりじゃないですね、全くといってもいいと思います。
基本的に1つの性能が優れているからといってその違いが音に反映されることはほとんどありません。
周波数はもちろんのこと、高いレベルでのハイレゾ対応であったり振動版の材質であったりと、さまざまな要素が組み合わさって初めて「いい音」に聞こえるわけです。
という訳で、この周波数という点は知っていて得するというよりも、「知らないと損をしてしまう」ポイントとして理解していただきたいと思った次第です。
なんか『極の音域 Hi-Res ALDEBARAN』の批評記事みたいになってしまいましたが、この製品は+で材質にもこだわっていたりと、ただ周波数だけを売りにしているわけではないので興味のある方はカタログを見てみるのもいいかと思います。
ただ商品説明を見ていて、周波数の帯域を売りにするのはちょっと違うんじゃないか?と思って紹介させてもらいました。まぁ周波数の帯域を売りにしているとこはたくさんあるんですけどね。関係者の方にはゴメンナサイ(-_-)。。。